スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ株式会社発行)では、毎月旬なゲスト選手が語る「鈴木健.txtの場外乱闘」が連載されています。現在発売中の2025年12月号では、第137回(本誌ナンバリング)ゲストとして全日本プロレス・芦野祥太郎選手が登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!
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明るく楽しく激しく鋭いプロレス。
俺は太陽よりも土星になる
芦野祥太郎(全日本プロレス)

ザイオンはクリエイター、
オデッセイは陽気なアメリカ人
HAVOC(ハヴォック=大混乱の意)、当たりましたね。
芦野 当たりましたね! 最初はお試しというか、ザイオンが日本に来て2人でどれだけできるのかぐらいの感じで、今のようになるという確信なんてなかったんですけど、メンバーたちがすごくやる気に満ち溢れていて。俺からすると、ちょっとつかみ取ったなという受け取りで、2023年の「チャンピオン・カーニバル」で優勝しながらその試合で左腕を骨折してしまい、7か月間欠場したあとに復帰してからの1年間はなんとなく自分の中でうまくいかない状態が続いていた。ザイオンもNXTをクビになって、次はどこでプロレスをやるか模索しながら日本にやってきた。オデッセイも同じですよね。潮﨑豪さんもノアをやめてどうなるのかという状態で全日本へ来て…4人のバックボーンというか、境遇が似通っていたからこそ気持ちを共有できたのがハマったんだと思うんです。心の底から楽しんでプロレスをしていますよ、今。
ザイオンと2人でスタートした時点では、ユニットというよりもタッグチームという認識だったと思われます。
芦野 そうですね。俺も2人でやっていくんだろうなと思っていたんですけど、ザイオンがオデッセイを連れてくるとなった時は、200kg近いやつが来るっていうんで飲まれちゃうんじゃないかと不安にもなりつつ、パーソナリティが合うっていうか、友達みたいな感じなんですごくしっくり来たんですよ。これならユニットとしてやっていけるなっていう手応えをつかむのは早かったです。
これまでも多くの外国人選手が全日本にやってきましたが、なぜザイオンと波長があったんでしょうか。
芦野 まず同い年っていうのがあった。2人とも早生まれで、なおかつ青春時代をスポーツに注いできたというのも共通していて。
ザイオンはオーストラリア出身ながらラグビーでサモア代表になっています。
芦野 ホンモノのトップアスリートですよ。自分もレスリングで大学までいっているので、そういうところでフィーリングが合うんですよね。
言葉は通じたんですか。
芦野 オーストラリアの英語って聞き取りやすいんで。アメリカ人の英語は早すぎて2割ぐらいしかわからないですけど、ザイオンの言葉は6割ぐらいわかる。そこから会話を続けるうちに自分の英語も上達して、オデッセイともうまくコミュニケーションはとれています。
そういう上達の仕方もあるんですね。
芦野 もちろん翻訳アプリを使うこともありますけど、なるべく使わないようにして会話でコミュニケーションをとるようにしています。ザイオンはね、めちゃくちゃいいやつなんですよ。人を思う気持ちが強いというか。オデッセイは典型的に陽気なアメリカ人ですね。あの2人はNXTでずっと一緒で、オデッセイの方が年下だから弟でザイオンがお兄さんの関係性なんですよ。そこに僕が入ったことで、また新たな距離感でやれているようです。
明確にザイオンから「俺と一緒にやろうぜ」と意思表示をされたんですか。
芦野 そこまでの言われ方ではなかったんですけど、何回か組んでから「俺はおまえと絶対に組みたかったんだ」とは言われました。全日本に初めて来た時、みんなに挨拶するじゃないですか。知らない者同士だから、最初は「どうも」という感じになる中で俺は普通に自己紹介して握手もしたんですけど、それで「おまえは裏表がないやつだった。だから一緒にやってみたいと思ったんだ」って。
何気ない挨拶の仕方からピンと来たと。HAVOCの名前はどちらの案だったんですか。
芦野 2人で名前を考える中で、その時はザイオンがビザの関係で一度帰っていたからインスタのメッセージでやりとりしたんですけど、ザイオンから出ました。俺もわかりやすい方がいいと思っていたんで、これはいいと。
何かに由来しているんですかね。
芦野 どうだろう、そこは聞いたことがないですけど英語圏の人たちはけっこう好きな言葉なんじゃないですかね。昔、WCWでも使われていたし。
PPVショー「HALLOWEEN HAVOC」ですね。ワンワードだから憶えやすくていいと思いました。
芦野 今まで自分がやっていたユニット名って「Enfants Terribles」にしろ「GUNGNIR OF ANARCHY」にしろ言われてみれば確かに長い名前ばっかでしたね。10~11月に北海道巡業を8試合やったんですけど、どの会場も入場で一緒になって「HAVOC!」ってやっていたんですよ(顔の前でクロスした両腕を勢いよく下げるポーズ)。
すでに北海道でも浸透していたと。
芦野 すげえっ!って思いました。それまでの俺は何もしないのが入場っていう考えで。曲が鳴ったら一秒でも早く入って闘いを待つというのだったのが、10年目にしてガラッと変わるという。みんなが入場シーンでいろんなことをやるから、あえてそうしない方がカッコいいって思っていたのが、ザイオンによって変えられました。「もっと(違うことが)できるからやろうぜ!」って引き出してくれた感じです。そこまで外に向けたことが俺自身、なかったですから楽しいですよ。
あの入場スタイルもザイオンが考えたんですか。
芦野 一緒に考えているけど、60~70%はザイオン。そこからアイデアを出し合いながらブラッシュアップしていったのがあれです。だから彼はクリエイターなんですよ。ユニット名を考えて、入場の見せ方も考えて、曲も自分で作っていますからね。
人気爆上がりのエントランステーマ曲です。
芦野 アメリカにいる友達の作曲家と一緒になって作ったのを持ってきたんです。それもHAVOCを始めてからそれ用に作ったもので、ザイオン本人が歌っているんですよ。だから曲名は今のところないんじゃないかな。ザイオンに著作権があるんで、自由に使えるという。
そうだったんですか! ミュージシャン声ですよね。
芦野 歌、うまいんですよ。この前、カラオケにいったんですけどエミネムとかアメリカのそういう系を歌っていました。ロゴのデザインもザイオンだし、クリエイターでありトータルプロデューサーですよ。この技はもうちょっとこう出したらいいとか、試合が終わったあとの立ち位置とか細かいディテールまでをやるんで。そこはWWE/NXTにいた人間だからカメラの位置を意識して、こっちを向けば顔がどう映るっていうのを細かく考えている。そこがお客さんにも響いているんだと思います。
今までとは違う潮﨑豪を
引き出せたらと思っている
そこに潮﨑選手が加入するというのも、結成当初は想像していなかったと思われます。
芦野 まったく。おそらく今まで潮﨑豪を応援していたファンも驚いたと思いますよ。なんなら、ちょっと嫉妬もしているかもしれない。これを前の団体で見たかったって。それぐらい楽しんでやっていますからね。手を上に挙げて振り下ろす呼吸も3ヵ月ぐらいやって、今から「HAVOC!」ってやるなと目を見てわかるようになったんですけど、潮﨑さんは心配だからチラチラとこっちを見て、俺ら3人がやったあとにちょっと遅れてやるという感じだったんですけど、それも控室へ戻ってから「今日、遅れましたね」って突っ込むと「ゴメンゴメン」って返すようにフランクなんですよ。日本のプロレス界にある先輩後輩のようなものがなくて、それはザイオンとオデッセイの影響だと思うんですけど、俺自身も感覚がアメリカンなんです。それが潮﨑さんにとって新鮮なのかもしれない。
潮﨑選手とは川田利明プロデュース興行で1度組んで以来、接点がなかったんですよね(2019年2月8日、新木場1stRING。井上雅央&本田多聞に勝利)。
芦野 それもあの時っきりでしたからね。アントニオ猪木さんのお葬式で顔を合わせたぐらいで、プライベートでの交流は一切なかったです。でもHAVOCに来た時「久しぶりー」っていう感じでぶっちゃけていたんで、潮﨑さんってこういう人なんだと思って。だから別に違和感のようなものもなく…それは豪さんの方が先輩だから俺の方が気を遣わなくていいっていうのもあるのかもしれない。自分が先輩だったら、後輩の面倒を見なきゃっていうのがあるじゃないですか。それにもともとHAVOCを始めた時、俺たちは上も下もない、みんな平等だからリーダーも必要ない。そうやってみんなで上にいこうぜっていうルールのようなものがあったんで、その中に豪さんが入ってきて同じ感覚でやっているんだと思います。
プロレスラー・潮﨑豪はどう映っていますか。
芦野 潮﨑豪のプロレスが完ぺきなものとしてあるじゃないですか。それは力強いなって思います。そこに俺のプロレスをどう加えてタッグチームとしてやっていくかっていうのがこれからなんで、それは最強タッグ(世界最強タッグ決定リーグ戦)で見せていくべきものだから自分でもワクワクしているんですけど。
10・22後楽園における潮﨑選手の宮原健斗との三冠ヘビー級戦は、同じプレイヤーとしても心揺さぶられるものがあったのでは?
芦野 俺は以前に潮﨑さんが全日本へいた時のことを知らないからその物語はよくわからないけど、純粋に試合として全然動けるし最前線でやれる人なんだなっていうのは思いました。ザイオンとオデッセイも「これはいける!」ってなったみたいで、ラリアットがボカン!って決まった瞬間は控室で「うおおぉぉーっ!! ヤベエぞ。宮原の意識がないんじゃないか!?」って、3人で盛り上がりましたから。
宮原選手の試合後のマイクもありましたが、全日本のファンが受け入れた形でした。
芦野 全日本のファンはやさしいから受け入れてくれそうに見えて、意外とそうでもないところもある。中嶋勝彦の時はスーパーアレルギー反応が起こったじゃないですか。それに対し潮﨑さんの場合は受け入れられましたよね。それはあの試合内容だったからというのもありますけど、人柄によるものなんじゃないですか。北海道巡業中に飲んだんですけど、ヤバかったですから。メガハイボールを2口で飲んでいました。外国人のザイオンとオデッセイの方が驚いちゃって面白かったですよ。オデッセイがけっこう真面目に聞いたんですよ。「なんでユーはHAVOCを選んでくれたんだ?」って。僕が通訳して伝えたら、潮﨑さんの答えはひとこと「フォーッ!」(甲高い声で)でした。答えになってないじゃんって思ったんですけど、それでオデッセイも「OK!」って。
いいんだ。
芦野 そんな感じで明るい。巡業中、ずっと明るいんですよ。巡業で疲れるけど、潮﨑さんと喋っていれば疲れがまぎれる感じでしたね。だから自分も、この数年で今が一番精神的にいいです。2018年(WRESTLE-1チャンピオンシップ王者として君臨)と同じぐらい。全日本に来てからはなかなかうまくいかない→面白くない→またうまくいきそうでいかないというのがずっと続いていて、自分の中にモヤモヤしたものがあったのが、やっとそれが取っ払われて楽しくできるようになった。
骨折したあとは自分をポジティブに持っていこうとはしていましたが…。
芦野 ポジティブどころか、ネガティブにいかないようにしている感覚でした。ゼロの状態にあるからマイナスにはしないようにというだけで、明るいことは考えられなかった。とにかくネガティブな考えにはならないようにしようというのがこの数年だった。それが心の負け癖のようになっていたんだと思います。それだけに、もっといろいろやっていいじゃん!って思えるようになったこの出逢いは大きかった。HAVOCがなかったら(全日本を)やめていたかもしれない。去年の今頃の巡業カードとか見てもらえばわかるんですけど、第1試合で特にテーマもない試合が組まれて、明日も第1、2試合と休憩前が続いて。そういう環境がずっと続くと、自分が正しくないのかなと思っちゃうんですよ。何か間違っているからこのポジションにされているんだって、そこは冷静に見られましたね。
テーマをつかめなかったんですかね。
芦野 つかもうとしなかったのかもしれないです。
黒潮TOKYOジャパン選手や立花誠吾選手と楽しそうに絡んでいても、無理やりやっているという感は正直、ありました。
芦野 いや、ホントそんな感じですよ。だからXでも「今は顔つきが違う」って書かれます。自分が楽しくないと楽しさは伝えられないんだって、改めて思います。
その真っ只中で最強タッグ決定リーグ戦へ臨めるのはいいタイミングです。
芦野 今のところ2人だけのタッグは(HAVOCとして)2回やっていますけど、うまくいきそうな感触はありました。伸びしろはもちろんとして、可能性はいっぱいあるなと。潮﨑さんもいろんな人と組んできた中で、そことは被りたくないっていうのがあるんで。なんか嫌じゃないですか、元カレと一緒になるみたいで。だから、ちょっと今までとは違う新しい潮﨑豪を引き出せたらと思っています。
お二人のチームの入場は?
芦野 HAVOCでいきます。2人以上いればHAVOCですから。潮﨑さんはスライディングしてリング下へ降りてくるんですけど、あれも4人で考えて。俺とザイオンが両コーナーで、オデッセイがど真ん中じゃないですか。じゃあどうしようかなと思って、エプロンに座ったらHAVOCポーズができないよな、でも、ただ場外を練り歩くのもなあ…となってザイオンと考えてやってみたらいい感じになった。ただ、2人の場合は潮﨑さんもコーナーに上るかスライディングで降りるかはまだわからないですね。ザイオンが、あそこは俺のポジションだっていう意識が強いんですよ。
芦野選手はチャンピオン・カーニバルを1度制覇していますが、最強タッグ決定リーグ戦は優勝経験がありません。
芦野 うーん、今までだったらそういうリーグ戦や王道トーナメントのようなものはそこ(優勝)にフォーカスをMAXにする感じでしたけど、今は楽しんだらついてくるぐらいに気軽でいます。それを潮﨑さんと楽しめるかなぐらいの感覚で、これから作り上げていくワクワク感でやってその結果、優勝すれば完ぺき。ただ、優勝するにはとんでもない人間たちがいるわけじゃないですか。反対ブロック(Bブロック)にザイオン(188cm)&オデッセイ(196cm/184kg)がいるわけだし、こっち(Aブロック)には綾部連(200cm)&タロース(213cm)もいる。全日本プロレスが巨大化していく中、このサイズ感で何を残せるかっていうのをまた新しくテーマとして…それが全日本に来た当初のテーマだったんで、もう一度そこに還ってデッカいのを全員ぶん投げる楽しみもあります。
もともと全日本は大きいプロレスラーが集まる場だったのに、そこからさらに大きい選手がやってくる。
芦野 普通に生きていて、2mの人間が何人も周りにいるなんてないじゃないですか。この間、HAVOC同士で試合をした時(11・3札幌。○ザイオン&オデッセイvs芦野●&潮﨑)、オデッセイは(ジャーマン・スープレックスで)投げられたんですよ。それまで投げた一番デカいのはサイラスだったけど、あれは160kgぐらいだからオデッセイで更新しました。ただ、低かったんでそこは高くぶん投げるようにしなきゃ。130kgだったら俵返しで持っていけるんですけど、さすがに160kgぐらいになるとジャーマンでしか投げられないんで。
重さ以前にクラッチが握れるかどうかですよね。
芦野 脂肪をかき分けてギューッてやると組めるんですよ。それでオデッセイを持っていけましたからね。仲間だけど、どう倒すかっていうのを…とにかく体はシンドかったですけど楽しかったんで、決勝でHAVOC対決ができたらいいです。
人の顔を踏んづけるのが自分に
合っていると思っていたけど…
今の全日本プロレスの中で、自分の立ち位置の持っていき方はどのように考えていますか。
芦野 話してきたように、自分が楽しむというところがやっと出せるようになったんで、それを続けていれば新しいものが根づいていくという段階ですね。全日本のプロレスは“明るく楽しく激しく”というのがあって、最近はその中でも明るく楽しくに全体がいっているように映っている。そこに俺はなかなかついていけないっていうのがあったんですよ。明るく楽しくやるのはいいんだけど、自分のプロレスがうまくフィットしていかない感じがあって、周りがその雰囲気でやっている中で一人ポツンとしていた。でも、そこにHAVOCとして入ることで、明るく楽しくの部分がありつつ、より闘いを乗せられるユニットになった。今の状態が自分に一番合っているなって思うんです。それは、あの入場シーンが大きい。そこでまず爆発させれば、試合が始まれば闘いでお客さんもついてくるっていうようになったんで。
WRESTLE-1時代の硬派な芦野選手が、明るく楽しい全日本の中に入るとノリが違うというのはご自身も感じていたことだったんですね。
芦野 特にこの1、2年ですね。全日本に来た当初はもっと闘いの部分を色濃く出せていたと思うんです。それがだんだん薄まっていったのは、知らず知らずのうち自分自身が慣れすぎちゃったのかもしれないんですけど、その雰囲気が好きになれなくて。自分の一番やりたいプロレスというのは鋭さを感じさせるプロレスなんですけど、そういうのって対戦相手がいないと成り立たないじゃないですか。そうじゃないと空振りみたいな試合になっちゃう。そういうのが続いて、こっちが緩くしなきゃいけないのかな、丸くなんなきゃいけないのかなと思って、それで自分がつまらないレスラーになっちゃうという。本当は尖り続けてブチ破んなきゃいけなかったんですけど、一人ではできなかった。でも今は一人じゃない。ザイオン、オデッセイ、豪さんの力を借りて明るく楽しく激しくに鋭さを加えていく。最強タッグは、それを豪さんと見せていく場になると思います。
全日本は安齊勇馬選手を筆頭に、下の世代が台頭するスピード感もすごいです。
芦野 それはもう、早ければ早い方がいいんじゃないですか。十代でも闘える選手がいるなら対象の相手が増えるほどいいんで。若返りが生まれない団体は終わりですよ。若いファンは若い選手につくんですから。おじさんには、ずっと一緒に歩んで応援してくれる人たちがつくけど、新しいファンは若い選手が引っ張ってくる。俺はそれがいい流れだと思うんです。そういう意味で今の全日本には、自分を生かしやすい雰囲気がある。リング上はともかく、潰す人がいないですから。出る杭も打たれない。それがこの時代には合っているんですよ。たとえばデカいやつには昔のような練習をさせなくてもいい。デカいやつに合った練習をさせて早々にデビューさせる。海外がそうじゃないですか。
その一方で田村男児選手や井上凌選手のように、大きくなくともコツコツやって伸びている選手もいます。
芦野 自分もそうでしたからね。WRESTLE-1に入った時、羆嵐が同期で先に陽の目を浴びた。でも俺は絶対に自分の方が上にいけるから大丈夫だという自信がありました。だから、コツコツやる中でも自分を貫けるかどうかだから、今の井上はあれでいいと思います。井上とGAORA TVのベルトを懸けてやるのも(11.16高崎)、そういうことを下に伝えていけたらというのもあるんで。
GAORA TV王座はそういう位置づけで若い選手とタイトルを懸けてできるベルトです。
芦野 そうそう。三冠ヘビー級のような位置づけではないからキャリアや実績に関係なく、挑戦したい人間ができるんで、そこで自分も若さに触れて楽しく成長できればいい。
言われてみれば下の世代とはそれほどシングルマッチで本格的にやっていないんですよね。
芦野 そうなんです。今の全日本って、やったもん勝ちだと思うんで。その中でキャリア10年になった自分がどうするかっていうのも向き合うべきことですよね。もちろん、三冠ヘビー級のベルトを目指すっていうのは目標としてありますけど、タイトルを獲ることよりも自分自身をさらけ出す楽しさのあとに、そういうのはついてくるっていうのが今の答えです。これまでは出せなかったというか、出さないよう出さないようにしていたんだと思うんです。それも他人と被らないようにっていう考えからだったんですけど、自分より明るい人間がいたら別に俺は暗くてもいいかなみたいな、太陽に対する月でしたよね。なんていうか、団体全体を見ちゃうんですよね。この選手がいるんだったら俺はこの位置にいた方がいいというようにね。でも、それももういいかなって。
以前は、自分は月でもよかったんですね。
芦野 太陽じゃなくて全然よかった。むしろ月の方が…10年のプロレス人生の中でヒールの方が長いんですよ。悪者が一番輝く時って、いい者にやられた時なんで。それがなんか染みついちゃっていたんでしょうね。でも、この時代って本当の悪者っていないじゃないですか。
ヒールでも支持されるケースがあります。
芦野 それとともに、月でいる発想そのものがなくなってきているって考えるようになりました。ヒールでいたかったんですよ、その方が楽しいから。
人気者になってチヤホヤされたいとは…。
芦野 いやいや、全然楽しくないですよ。人の顔を踏んづける方が自分に合っていると思っていた。でも、それは団体内における自分の立ち位置だっただけであって、本当の自分じゃなかったんだって、やっとわかった。長かったですね。それがあったからこうなった10年かもしれないし、10年費やしたから今がある。ヒールで天下獲りたいと思っていたけど、そういう時代じゃなかったですね。これは必要とされていないなって。
確かに今の全日本はみんながヒーローという印象です。
芦野 だから俺はダークヒーローになりますよ。ヒーローはいっぱいいるんで。
太陽は宮原健斗であり青柳優馬であり、安齊勇馬であり。
芦野 それは動かないですから。俺は土星になります。惑星の中でも存在感がありますからね。HAVOCは土星人の集団です。4人になったことでいろんな回し方もできると思うし。こいつはいいと思えるやつが発掘できたら5人というのも考えますけど、今の4人で完成した感があるので、当分はこれでいいかなと。メッセージはいっぱい来るんですよ。海外のレスラーから俺を入れてくれって。ザイオンとオデッセイがこうなったことで、俺もいける!と思うんでしょうね。海外でも注目度が高い。そういう面でも影響を与えているのを知って、より間違っていないなって突き進める。その上で…最強タッグを獲れたらいいですね。